水道の水垢を防ぐ方法は?メカニズムから化学的に解説!
家の水まわりを見渡してみると、蛇口や洗面台などに白く固まった汚れが付着していることがあります。これは、一般に「水垢」と呼ばれるものです。
では、水道の水垢を防ぐにはどのような方法があるのでしょうか。
今回は、水垢ができるメカニズムから知り、その対策を紐解いていきます。
Contents
水垢のできるメカニズム
水垢は、水道水に含まれるミネラル分(カルシウムやマグネシウムなど)が蓄積して固形物となったものです。そのため、水道水に含まれる成分によって引き起こされる現象と言えます。
本項では、水道水に含まれる成分および水垢ができるメカニズムを解説します。
水道水に含まれる物質
水道水には微量のカルシウムイオン(Ca2+)やマグネシウムイオン(Mg2+)などのミネラル成分や二酸化炭素が溶け込んでいます。
特に、二酸化炭素は以下の化学反応式に基づき、水中にHCO3-を発生させます。
CO2 + H2O ⇌ H2CO3 ⇌ H+ + HCO3-
二酸化炭素が水に溶けると、まず炭酸(H2CO3)ができ、次にプロトン(H+)と重炭酸イオン(HCO3-)に分かれます。
上記により、水道水には二酸化炭素によるHCO3- と(Ca2+)や (Mg2+)などのミネラル成分が共存しているとわかります。
水垢のできるメカニズム
水垢は、水道水に含まれるイオン成分により作られます。具体的には、水道水に含まれる微量の (Ca2+)や (Mg2+)が水分の蒸発により濃縮され、水に溶けにくい化合物を形成します。
以下は、水中におけるカルシウムやマグネシウムの反応を示した化学反応式です。
【カルシウムイオンの場合】
Ca2+ + 2HCO3- → CaCO3(ス) + H2O + CO2
【マグネシウムイオンの場合】
Mg2+ + 2HCO3- → MgCO3(ス) + H2O + CO2
((ス)は固体を表す)
このように、(Ca2+)や (Mg2+)は水中の重炭酸イオン(HCO3-)と反応して、難溶性の化合物を生成します。
そして、上記の反応で作られた炭酸カルシウム(CaCO3)や炭酸マグネシウム(MgCO3)が、蛇口や洗面台の表面に徐々に付着し、水垢となるのです。
水道の水垢対策
水垢は、主に硬水(ミネラル分を多く含む水)の使用や、高温の水を使うと析出しやすくなります。また、水道管や配管の老朽化によりミネラル分が溶け出し発生するケースも少なくありません。
本項では、水垢を防ぐ対策としていくつかの方法を紹介します。
定期的な水垢の除去
水垢は、クエン酸(C6H8O7)や酢酸(CH3COOH)など酸性の洗浄剤を使って化学的に分解できます。
以下は、クエン酸および酢酸を用いて、炭酸カルシウムを分解する化学反応式です。
【酢酸の場合】
CaCO3 + 2CH3COOH → Ca(CH3COO)2 + H2O + CO2
【クエン酸の場合】
3CaCO3 + 2C6H8O7 → Ca3(C6H5O7)2 + 3CO2 + 3H2O
上記の反応により、炭酸カルシウムが水に溶けやすい以下の物質に変化します。
- 酢酸カルシウム:Ca(CH3COO)2
- クエン酸カルシウム:Ca3(C6H5O7)2
結果、水垢の除去に至ります。
また、酢酸やクエン酸は生物由来の有機酸で安全性が高い酸である点も特徴です。そのため、水垢除去剤として広く利用されています。
このように、酸性の洗浄剤を使うと、化学的に水垢を分解・除去することができます。
軟水器の設置
イオン交換樹脂を利用して水からCa2+やMg2+を取り除く装置です。そのため、水垢ができる原因そのものを根本から除去できます。
軟水と硬水の違いは、含まれるミネラル分の量で判断されます。
【軟水】
- ミネラル分が少ない水
- 水垢がつきにくい
【硬水】
- ミネラル分が多く含まれる水
- 水垢がつきやすい
このように、軟水器を設置すると、硬水から軟水に変えることができ、水垢トラブルを防げます。
浄水器の使用
浄水器を使うと、ミネラル分を吸着したり、イオン交換して除去したりでき、水垢対策に役立ちます。浄水器によるミネラル分を除去する方式には、主な以下の2つが存在します。
【吸着方式】
吸着方式では、活性炭などの吸着材を充填したカートリッジを利用し、水中のミネラル分を除去します。
また、吸着材には除去できる物質の種類や量に限りがあり、定期的な交換が必要です。
【イオン交換方式】
イオン交換方式では、樹脂を充填したカートリッジを使用します。
具体的には、以下の反応式のようにカルシウムイオン(Ca2+)やマグネシウムイオン(Mg2+)などと、樹脂中のナトリウムイオン(Na+)が入れ替わる仕組みです。
Na+ + Ca2+樹脂 → Ca2+樹脂 + Na+
このように、ミネラル分イオンを別のイオンと交換して除去します。
なお、イオン交換方式も吸着方式と同じく、一定期間使用すると樹脂の交換が必要になります。
水道の水垢を防ぐ方法は?メカニズムから化学的に解説!まとめ
今回は、水道に水垢ができる原因と対策を化学的な観点から解説しました。
一度、水垢が付着してしまうと徹底的な洗浄が必要で手間がかかります。そのため、定期的な水垢の除去や軟水器および浄水器などの設置により、長い期間に渡って快適な水まわりを保つことが可能です。
本記事を参考に、キレイを保つ小さな工夫から始めてみてはいかがでしょうか。